僕は、南インドにある「オーロヴィル」という世界最大のエコヴィレッジに1ヶ月滞在した。その内サダナフォレスト(Sadhana Forest)という、最もエコロジカルな場所で2週間暮らした経験をつづる。

 

 

地下水をろ過して安全に飲める飲み水

サダナフォレストの食事「ヴィーガン」

 

ここ、サダナでの食事は基本的にヴィーガン食だ。ベジタリアンという言葉は聞いたことがあっても、「ヴィーガン」という言葉は初耳だった。ベジタリアンというのは菜食主義者であり、肉や魚を食べない人。

 

 

ヴィーガンというのは、絶対菜食主義者という意味。この「絶対」という言葉が究極な感じがする。調べてみると、肉や魚はもちろんのこと、卵・チーズ・バター類・蜂蜜・ゼラチン等、「人間は動物を搾取することなく生きるべきだ」という動物愛護の思想を持った生き方のことであるため、健康志向という目的で生まれたベジタリアンとは似て非なるもののようだ。

 

 

驚いたのは、ヴィーガンは食事だけでなく、衣食住すべてのライフスタイルにおいても動物性の素材を使用しないという徹底ぶりだ。こんな生き方もあるんだなぁと、少し俯瞰的にヴィーガンを捉えてしまう自分がいるのは、肉や魚の味を既に知ってしまっているからだろうか。

 

 

何にしても、そういった個人の思想を柔軟に受け入れるような社会であればいいなぁと思う。つまり、日本という国はヴィーガンにとってはきっと生きにくい国だろう。2020年の東京オリンピックというきっかけを利用して、ヴィーガンレストランやヴィーガンコミュニティが増えていくことが、むしろ社会的により成熟していくようにも感じた。

 

配膳

 

インドという国は、ヒンドゥー教などの影響から国民の40%がベジタリアンだ。オーロヴィルのレストランやカフェには、必ずベジタリアンとノンベジタリアンが表記されていた。

サダナで一緒にボランティアをしていた20歳のオランダ人は、家族はベジタリアンでもないし、ヴィーガンでもないが、様々な情報や思考を重ねて自分でヴィーガンになることを決意して、それを家族にも伝えたのだと話してくれた。

 

手洗い場。銀のタンクの中の水を支柱の容器に注ぎ、穴から垂れる水で洗う。すごい節水。

 

僕はヴィーガンがどうとかというよりも、20歳で今後の自分の食文化を考えて大きな決断ができるという主体性と責任の持ち方に驚いた。日本人が同じ状況で同じことができるとは思えないのは、育ってきた食文化の影響が大きいとも思うし、きっと日本人には日本人の良さがあるのだと、その場では思うことにした。

 

毎日のヴィーガン食を作るキッチン。
かまど

 

チャイルドランド

サダナでは、地域の子どもたちに無料で開放している施設が隣接してある。その名も「チャイルドランド」。ここでは、なるべく保護者は立ち入らないようになっているとか。

 

理由を聞いてみると、親が介入することで子どもの経験を妨げてしまう機会を減らすためだという。子どもがすることに無駄はなく、好奇心をこの場で体験できるような場所としている、などと長期ボランティアの方が話してくれた。

 

子ども用かまど

 

ここもボランティアによって管理されているが、子どもたちがしたいことを実現できるようにサポートすることを目的としている。昼食も無料で振る舞われ、子どもが望めば調理もできる。近くの村からでもサダナの場所は遠いため、無料のシャトルバスが運行している。

 

 

僕が見学した時は、ハンモックでゆらゆらしている子、ボランティアとボールを投げ合っている子、女子数人で楽しく話している子、あらゆるものを枝で叩いでその音の違いを楽しんでいる子など様々な子がいた。基本的に対象年齢はなく、「子ども」であれば誰でもいい。

 

 

その日は小学生くらいの幅の子たち10人くらいが過ごしていた。

 

 

自然な環境化で自然に自分で居られる時間が素敵だった。

 

ゼロウェスト

 

Sevaの1つに「ゼロウェスト」という活動があった。それは地域社会のゴミ箱を減らし、ゴミを再利用するというよくある活動だ。しかし、行っていたのは環境破壊につながるプラスティックゴミをペットボトルにぎゅうぎゅうに詰めるという活動だった。

 

 

 

これは何に使うのかと聞いてみると、「これをたくさん作って家を建てるのよ」と。なんか面白い。リサイクルというと、何となく分別して終わりとか、気持ちの乗らない面倒という負のイメージが先行してしまうが、ここではそれを楽しもうとしている様子があった。

 

だって、ペットボトルで家を建てるのだ。発想が次元を超えている。もはやアートの世界だとも思った。完成したら、ぜひ見てみたい。

 

 

タイヤアートその1
タイヤアートその2
タイヤアートその3

コンポストトイレ

トイレは、微生物の働きで排泄物を分解して堆肥にする「コンポストトイレ」。大便と小便が分かれていることで、効率良く堆肥にすることができる。大便中に尿をしたくなったら、すかさず容器で受け取るのだ。これがなかなか難しい。素早い動きを要するのだ。

奥の円形が大便。手前が小便。

 

大便の最後にはおがくずを入れる。僕たちの糞尿の90%は水分。排泄物の独特の臭いも、水分があることで増大してしまうようだ。その水分を吸収して好気性細菌によって無臭のまま酸化分解してくれるのが「おがくず」というわけだ。

 

おがくず

 

また、使用後のおがくずにはN(窒素)・P(リン)・K(カリウム)など、植物へ有効な栄養分が多くふくまれている。有機肥料として安心して活用できる。

毎週金曜日に行なわれているサダナのワークショップでは、長期ボランティアがサダナ内を案内するツアーが行なわれている。今回の案内人マイクが、おもむろに土を握りツアー客に渡した。

 

長期ボランティアのマイク

 

「臭いを嗅いでみてください。これはなんだと思いますか?」と聞くと、ツアー客は「木」「腐葉土」などと言う。そしてマイクがこう言う。「これは私たちのうんこです」。ここでツアー客が悲鳴じみた驚きが起こるというのが、いつものパターンになっているようだ。

僕も臭いを嗅いだが、悪臭は全くしない。それもそのはず、コンポストトイレから糞尿をぬきとり(移動しやすいように高床式になっている)、それをタンクに入れて数年もの間放置する。その後、外に出して数ヶ月。そしてやっと堆肥となるのだ。

堆肥にしているところ

 

途方もない時間がかかる。しかし、こういった時間がかかっても、めぐりめぐって僕たちの食べるものにつながるというサイクルが、自分の目で見ることができるのは単純に面白い。

 

昔のサダナ

サダナは、何もない荒地の状態に1本の木を植えることから始まった。

Sadhana Forestの創設者家族

 

ほとんどの作業は人力で行われたそうだ。もちろん、作業者はすべてボランティアだ。

 

 

数年かけて石と木とヤシの葉で作った家が、サイクロンで無残な姿になったこともあったそうだ。

 

 

それでも諦めずに、この活動を続けてこられたのはどうしてだろうなとふと思った。

 

 

同時に、美しいとも思った。

 


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