サンタクロースビレッジ
フィンランドのロバニエミでは、政府公認のサンタクロースに会える。それが「サンタクロースビレッジ」である。
ここでは、サンタクロースに会えるだけでなく、北緯66度33分線の北極線をまたぐことができる。
また、トナカイやハスキーと触れ合うことができたり、サーミ(先住民族)の伝統的な家や宿泊施設がビレッジ内にある。
そして、フィンランドのアパレルブランド「marimekko」のアウトレットもあった。
童心
誰でも一度は信じていたのはないだろうか。その存在が目の前にいると思うと、自分がいい大人であること忘れさせるくらい胸が高鳴って無邪気さが蘇ってくる。
同時に、心の中に子どもだった自分がしっかり残っていたことに安堵した。この日は、「童心」をあけっぴろげにしていこう。そう思った。
このビレッジ内には、サンタクロースと会える場所が2か所ある。僕はその両方に訪れた。
1人目のサンタクロース
サンタクロースがいる場所までには氷河(実際にはガラス)の上を歩いたり、大きなソリが飾ってあったり、ドアにある穴を覗くとサンタクロースのお手伝いをしている妖精「トントゥ」の様子を見ることができるなど、様々なデコレーションや仕掛けがあって面白かった。(撮影は禁止されていた)
僕が訪れたのは9月の下旬。閑散期ということもあって待ち時間5分でサンタクロースの部屋に入ることができた。
トントゥに扮したスタッフの誘導のもと部屋に入ると、赤と白の服を着た巨体、雪の付いたブーツ、小さなメガネと真っ白なヒゲ…。あの想像しているサンタクロース100%のサンタクロースがそこにいた。思わず、「わぁあ!」という声が出た。
「よく来たね!」
「どこから来たの?」
「日本?」
「寿司はおいしいよね!」
「ここには1日に200通もの手紙が送られてくるんじゃ!」
など、7,8分くらいだろうか、サンタクロースとの会話を楽しんだ。後ろがいなかったこともあり、ゆったりと話しができた。もちろん英語での会話なので、うまく聞き取れずに何度も聴き返した。
しかし、そこは天下のサンタクロース。僕のペースに合わせてゆっくり会話を進めてくれた。
面白いなと思ったのは、その会話の最中もスタッフ扮するトントゥがせっせと仕事をしていたことだ。仕事というのは、世界中に贈るプレゼントの準備。手紙を読んだり、本棚から本を取り出して玩具を調べたりと、世界観が素敵だった。
サンタクロースへの質問
最後に、僕が気になっていた3つの質問をした。
まず、「好きな食べ物は何ですか?」
きっと子どもたちが一番気になる質問だろう。
その答えは…
「好きな食べ物は、ベリーさ!!フォフォフォ!」
「ブルーベリー、クランベリー、リンゴンベリー、ラズベリー。全部好きじゃな!」と。
「ベリー?あの丸くて小さくてかわいらしいベリー?」
その巨体からは想像もできない食べ物が出てきたので、少し拍子抜けした。多分、ハンバーガーみたいなものを勝手に想像していたのだろう。
次にした質問が、「サンタクロースになるにはどうしたらいいですか?」
その答えは…
「まずはエルフの学校に99年通うことだな!フォフォフォ!」
「99年?じゃああなたは今何歳ですか?」と僕は思わず聞いた。
すると「何歳に見える?」と、女性が上目遣いで聞き返すような返しがきたので、99年の学校を卒業して、なんやかんやサンタクロースとしての経験を数十年か積んだであろう会話内容から計算すると…
「120歳くらい?」と僕は答えた。
すると…
「フォフォフォ!120歳だと?私は587歳だ!!」
「…えぇぇえええええ!?」
なんか中途半端だなぁという心の声を押し殺し、僕は「…Wow!」と言った。
その歳の意味を知ることはできなかったが、とりあえず、このサンタクロースの年齢は587歳ということだ。
最後の質問は少々難しい質問をしてみた。
「あなた(サンタクロース)にとって、“良い子”とはどんな子どもですか?」
よく、サンタクロースの言葉で「良い子にするんじゃぞ」という勝手に刷り込まれた言葉があったので、確かめてみたかったのだ。
その答えは…
「良い子かぁ…。子どもは良い時もあれば悪い時もあるからなぁ。でも、私はその両方が好きだがね!フォフォフォ!」
…なんか深っ!!
つまり、子どもらしい子が“良い子”ということになるのかなと理解した。子どもらしいというのは、きっと自分の気持ちに正直でいることなんだと、このサンタクロースと話していて思った。
そして、「君と話せて楽しかった!またおいで!」という言葉がこの時間の終わりを告げた。
なんとも不思議な時間だった。自分が憧れた有名人やスポーツ選手と会って話したかのようなふわふわした高揚感が出口の扉を抜けてもなお続いていた。
2人目のサンタクロース
僕は気持ちを少し落ち着かせ、次なるサンタクロースの元へ向かった。
次のサタクロースの部屋は、土産ショップの奥にあった。最初と違ってすぐにサンタクロースは現れた。
「フォフォフォ!こんにちは!どこから来たの?」
などと、同じようなやり取りをした後、あの質問たちを投げかけてみた。
「好きな食べ物は何ですか?」
「好きな食べ物か!リーシプーロじゃな!」
「・・・リーシプーロ?」
「そうじゃ。米をミルクで炊いて、バターとシナモンで食べるんじゃ!美味しいぞぉ!」
「・・・あ〜!ミルク粥のことか!!」
1人目のサンタクロースとは違った回答に戸惑っていたが、どちらも共通するのはフィンランドの名産物、そして郷土料理であるということだ。つまり、サンタクロースはフィンランド愛に溢れているということになる。なるほど、サンタクロース。ちょっとずつつかめてきたぞ!
最後にこの質問をした。
「あなた(サンタクロース)にとって、“良い子”とはどんな子どもですか?」
「そうじゃなぁ…。それは家族や友だちを大切にする子じゃな!もちろん、自分もな!!」
えぇぇぇえええ!!深すぎておぼれる(笑)。
世界一の保育者
サンタクロースの世界観が、とてつもなく魅力的に思える衝撃さがあった。世界中の子どもたちを相手にしているサンタクロース。言うなれば、世界一の保育者かもしれない。決して付け焼き刃ではない人間の本質を見ているような気がした。
そして、質問の返答が異なっていたことからも、サンタクロース界も多様性を重んじていることが理解できる。同じ答えではなく、1人のサンタクロースとして目の前の人と向き合っていた。自分が好きなものや考え方など、同じ人間がいないように、同じサンタクロースはいない。
自分でいるってこと、そして違うってことが価値ある世の中になるよう働きかけているように。
大きくは書けませんが、実際にグリーランド国際サンタクロース協会が定めたサンタクロースになるための試験がネットにあがっていたのでシェアします。ちょっと面白い試験なのでぜひ見てみてください。実際にこの試験が行なわれているところ見てみたい…。