当初、スリランカへはインドビザを取るために行く予定だったが、アライバルビザの存在を知った。スリランカには行く意味がなくなってしまった。しかし、チケットは取ってしまっている。せっかくだから観光でもするかぁと軽い気持ちでいたのだが、この滞在が僕に貴重な体験へと導いてくれたのは後で分かったことだ。
以前の職場仲間と連絡を取っていると、なんと大学時代の友人がスリランカでスタジオを開いているとのこと。そのつながりから、スリランカのコロンボでお会いできることとなった。
その方は明子さんといい、僕がスリランカに到着する前からLINEをを通してスリランカの風土や文化、そしておすすめスポットなどを丁寧に教えてくれた。忙しい仕事の合間をぬって書きおこしているとは思えないほどの情報量と素直な言葉から、明子さんの人柄とキャリアウーマン感が伝わってきた。
「上司にしたいランキング inスリランカ」があれば、きっと1位だ。
そのスタジオの名前は『STUDIO FORT』。
ぜひ、スリランカに訪れた際はここで記念写真を!
僕もいつか顧客として訪れたいと思っている。
フォトグラファーの明子さんは、スリランカの魅力を多くの人に伝えたいと、2016年にスリランカのコロンボにスタジオをオープン。そこでは伝統衣装に身を包み、本場のメイクアップが体験できる。とても素敵なスタジオだ。
明子さんには2歳の娘さんがいた。最近人見知りが激しいという話から、スリランカでの子育て、娘さんの保育園生活、僕の保育園での経験談などを話していると時間はあっという間に過ぎていった。素敵なランチもいただき、とても贅沢な時間を共有させてもらった。
爽やかイケメンの旦那さんと明子さん、そして娘さんの3人家族だが、定期的にお手伝いさんをお願いしているという。フィリピンでも多かったが、生活や子育てに他人の力を活用する文化が海外には多い。それがとても自然な形だよなぁとふと思った。
本来、生活や子育てには多くの人の存在があることで相乗効果が生まれる印象だし、まさにwinwinの関係性が存在する。日本には、その敷居が低くなる工夫が必要だと思った。
僕は元保育士ということもあり、スリランカの保育園がどのような環境なのか興味があった。明子さんにそのことを伝えると、保育園とコンタクトをとってくれてスリランカの保育園見学が実現した。
明子さんはスリランカのことを「なんでもありなスリランカ」と表現していた。柔軟であるスリランカ文化とともに、明子さんの実行力と決断力、どんなことにも挑戦する姿勢が眩しかった。
異国の地で事業を立ち上げるには、想像もできない苦労があるのだと思う。しかし、その壁すらも超えてみせる原動力は「スリランカの発展」と「魅力を伝えたい」という純粋でぶれのない、内に留まりながらも煌々と煮えたぎるマグマのような志があるからなのかなと感じた。やはり、実際に行動に移している人は、何かが違う。
スリランカの保育園
明子さんの娘さんが(以下Hちゃん)通っている保育園は、園児数20人弱のいわゆる小規模型の保育園だった。Hちゃん以外すべてスリランカ人。年齢は、1歳くらい〜5歳くらいの子どもたちが同じ部屋で過ごしていた。
先生は2人と補助が1人。延長保育には別の先生が来るなど、シフトが組まれている。公用語の1つ「シンハラ語」を学ぶ時間もあるが、園では主に英語を使用。2歳のHちゃんも先生が話す英語を理解しながら生活を送っていた。
園内は、寝る部屋・遊ぶ部屋・キッチンが分かれており、遊ぶ部屋は半分が壁で半分がオープンな部屋となっていた。玩具はモンテッソーリ系が多かったが、先生たちの手作り玩具などもあった。
先生たちの言葉がけやスタンスも、子どもたちが自由に遊ぶというよりは、先生がその子の発達にあった玩具を選び、多くても先生1人に対して子ども3人で、その玩具を使って言葉の理解や発達を理解するためにクイズ形式に質問しながらやり取りをしていた。
食事風景をのぞくと、ほとんど先生が食べさせている。子どもたちも、当然のように口に運ばれてくるのを待っていた。現地の先生は、それが仕事の内でであると思っているとのことであった。
アート活動の際、数人(絵の具をする子)以外は隣の空間に座っているだけの時間が気になった。目の前にはたくさんの玩具があるのに、それを出して遊ぶことはしていなかった。
また、別の時間には文字教育があって、先生が点線で書いた英語のローマ字を上からなぞったりしていた。もちろん、年齢に応じてそれが直線や曲線だけであったり、絵にあるリンゴにもう1つのリンゴを加えると何個になるという数の問題を解いていたりもした。
先生たちは子どもたちからの質問に答えながら、その子の発達ノートに今日やっている内容や発達過程を書き込んでいるなど、個々の発達を非常に大事にしている印象を受けた。後で、どのような保育を参考にしているのかと聞いたところ、主にアメリカを参考にしたそうだが自分たちで考えながら色々なものを取り入れるようにしていると語っていた。
驚いたことの1つに、1歳児くらいの(その日いた中で一番幼い)子が自分の持参した水筒を自由に飲んでいたことがあった。大人が時間を見ながら定期的に水分補給を促す環境ではなく、その園では子どもたちが飲みたい時に自由に飲める環境があった。それを1歳児がしていたのだ。
軽食、昼食、水筒は持参形式だった。
ある先生から「子どもたちに何か披露してくれませんか?」という無茶振りを受け、戸惑いながらも「…じゃあダンスします」と言うと、目の色を変えて周辺のテーブルや椅子を片付け、さあどうぞ!とノリノリの先生たちに変貌した。
僕は元保育士でありながら、子どもの前では何もできないという人物だ。例えば手遊びなんてのも苦手だ。唯一うっすらと覚えていたエビカニクスというダンスを、スマホから音を流しながら披露する。すると先生たちのスイッチが入ったようで、その後は先生たちが様々なジャンルの音楽を流して自由で斬新で華麗な動きのもと楽しそうにダンスをしていた。
子どもたちはいうと、初めは遠慮していたが次第に先生の真似をしたり、自由に体を動かして自己表現していたのでそれなりに楽しんでいたと思う。面白いなぁと思ったのは、全てその場の即興創作ダンスであったということだ。笑
【園のタイムスケジュール】
8:00—8:30 登園&オリエンテーション
8:30—9:15 数やバレエ
9:15—10:00 英語(文字)やアート活動
10:00—10:30 軽食(おやつというより食事)
10:30—11:15 シンハラ語やアート活動
11:15—12:00 DVD鑑賞(日本語の童謡と映像が流れていた)
12:00— 昼食
予定の時間になったので私が帰ろうとすると、ノートを持った2人の先生が「見学した感想を聞かせてください」と言ってきた。
私は、気になっていた食事の仕方や子どもをただ待たせている時間が気になったということを話したが、先生たちの子どもたちの発達を理解しようとする姿勢がとても勉強になりましたと伝えさせてもらった。明子さん曰く、園からの通知表があるとのこと。その子のコミュニケーション能力や物事の理解具合など、様々な項目があるようだ。
そして、何よりもぽっと来ただけの僕に対して意見を聞いて少しでも学びに結びつけようとする熱意が素敵であった。この感覚は「慣れ」という魔物によって失われやすい。教育とは1人の人間が自分の人格を通して学び続けようとする過程でこそ輝く。そんな多くのモデルから、子どもは勝手に自分にあったもの選んでいくのだろうと、そんなことをスリランカの保育園から教わった気がした。
この機会を設けてくれた明子さんやたっぴ先生、現地の先生方に感謝したい。
ありがとうございました!!
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