藤野にある廃材エコヴィレッジゆるゆるに続いて、日本のエコビレッジ第2弾となる場所が、熊本にある『三角エコビレッジSAIHATE』だ。
SAIHATEへのアスセスはこちら。
ここは、廃材エコヴィレッジ村長の傍嶋飛龍さんとも繋がりがあり、廃材エコヴィレッジゆるゆるからSAIHATEへのはしご訪問が増えているとのこと。
僕も、インターネットを通してこの2つを知って、はしご訪問をした1人となる。僕はそこで、ベーシックインカム制度で2週間滞在させていただいた。
※ベーシックインカム制度とは、最低限の生活に必要な資金を無条件で支給するという制度で、宿泊費と食事代がかからず滞在中は0円生活を送っていた。
僕の滞在初日が、ゲストやインカムのお世話をしてくださるSAIHATE住人、坂井裕子さんの第3子出産日(自宅出産)と重なるというミレミアムな日であった。おめでとうございます!
数日後、生後間もない赤ちゃんを抱っこさせていただいたりもした。赤ちゃんを抱っこすると、なんとなく自分が強くなれる気がする。
出産直後で大変な時にもかかわらず、気にかけていただきありがとうございました!
三角エコビレッジSAIHATEとは?
SAIHATE村は東日本大震災があった2011年の11月11日に開村し、1万坪という広大な土地で、未来を見据えた新しい暮らし方を表現することができる強い土台を作ってきました。これは、来るべく「暮らしの大転換期」の為の準備であり、現代社会に対するポジティブな姿勢の表れでもあります。何かに反対するでもなく、テクノロジーに背をむけるでもなく、多くの現代人に受け入れられる“幸せを追求した新しい暮らし”を模索するという壮大な社会実験であり、オルタナティブ(持続可能な)文化を模索する新しいコミュニティです。
SAIHATEには、子どもを含め約30人の住人が暮らしていた。ある住人は、子どもの存在が村自体をより活性化させているとも語っていた。
村で仕事も生活もしている人、別の場所で仕事をしている人、仕事の都合で東京とここを行き来している人など、様々な生活の形があって面白かった。
SAIHATEには、数年前にクラウドファンディングで作られたゲストハウスもある。僕が滞在した2週間でも、多くの宿泊者が来ていた。
柔らかな木目とスタイリッシュな家具、そして独創的なデザインがゲストを出迎える。
また、パーマカルチャーを取り入れた庭もあり、そこでは韓国からの受講者対象としたパーマカルチャーワークショップなども開かれていた。
SAIHATE住人のスキル
大工、縫製作家、猟師、家具職人、映像クリエイター、マッサージ師、アースバックビルダー、ペインター、照明作家、ヨガインソラクター、歌手、パーマカルチャーデザイナー、コミュニティマネージャーなど多彩な顔ぶれだ。
各々が自分が好きなことを生業としている自立された個性派クリエイティブ集団のような印象を受けた。
新しいライフスタイルをエコビレッジという暮らしをベースに、次世代型の“コミュニティ”を創造しようとしているエネルギッシュな場所だ。
僕が滞在していた時も、3つくらいのプロジェクトが同時に進行されていたし、自分がやりたいことをやりたい仲間で実現させようとしている姿は、言われたことだけをしている社会には全くないであろう雰囲気をまとっていた。
村のコンセプトは“お好きにどうぞ”
発起人である工藤は前代未聞なコンセプトを打ち出します、それが「ルールもリーダーも無い、お好きにどうぞで始まる村づくり」型破りで非常識なこの発言に多くの人が戸惑いました。「そんな身勝手なコミュニティは潰れる!」「そんなやり方をしているところなんて無い!」しかし僕らは、日本人が長い歴史の中で養ってきた“調和”や“相手を思いやる心”があればきっと上手くいくと信じています。そしてそれは出口の見えない現代社会に対する希望や願いでもありました。
“お好きにどうぞ ”って?
この言葉を聞いてどう感じるでしょう?ある人は「なんでも自分の好き勝手にやっていいんだ!」と感じます。
しかし、僕らの中では自分の行動に対して大きな責任を持たせる言葉だと認識しています。好きなことをする自由とは、その行為の結果について「どんな未来を引き起こすことになるのか?」を深く考えること。
そして、その行為に関わるみんなとのバランスを意識したコミュニケーションを促すものになるのです。ここでは自分がしたい事を受け入れてくれる土壌があり、好きなことをする!という行為は驚くようなペースで斬新で面白いアイデアを形にして行きました。それは会社組織のようなヒエラルキー型の組織ではなく、ホラクラシー的な一つの新しい社会を生み出したのです。
自分は何がしたいのか?が問われる場所
自由。お好きにどうぞ。これらは自分ととことん向き合う言葉でもあり、自分が動いた結果周囲がどうなるのかということも含まれている。自分と他者。自分と社会。それらが表裏一体であることを感じさせる。
SAIHATEには、自分の好きを形にしてきた人、自分のやりたいを実現させようと常にワクワクしている人がいるので、自分には何ができるのかを探す時間が多い。
良い意味で放置プレイなので、「この人はこれをしている。あの人はあれをしている。私は何をする?」を考えさせられる環境下でもある。
常に流動的で柔軟なクリエイティブ集団に身を置くことで、自分の中の何かが変わることは間違いない。
ベーシックインカムの活動内容
※ベーシックインカム制度とは、最低限の生活に必要な資金を無条件で支給するという制度で、宿泊費と食事代がかからず滞在中は0円生活を送っていた。
僕が滞在して時期は、男性2人女性3人、計5人のインカムがいた。時期によってインカムの人数は異なるようだ。
インカムの1日の流れ
9:00 – 12:00 仕事
12:00 – 13:00 昼食
13:00 – 14:00 休憩
14:00 – 17:00 仕事
※時期によって時間は変わる
インカムの仕事内容
実際にインカムがしていた仕事はというと…
- 草刈り
- 農作業
- 犬の散歩
- ゲストハウスの仕事
- 住人の手伝い(家具作り・花摘み・子守り)
- プロジェクトのお手伝い(プール)
- 木工(デッキテラス作り)
- イノシシ対策(トラップの設置と確認)
- 藍染
- ヤギと鶏の世話
- 甘夏ジュース作り など…
あくまでも自分にあったものを
インカムとしての仕事は様々なので、その中から自分に合った仕事を選ぶことも可能。農作業が好きということで、午前も午後も畑仕事をしているインカムもいた。
木工が得意なインカムは、住人のデッキテラス作りを任されていたりもした。僕は、初めて草刈機を使っての草刈りに挑戦したり、物作りが好きなので木工作業を手伝わせてもらった。
フリースクールに携わっているマーシーさんと一緒に、製作したロッカーの設置をしに学校に訪れたりもした。大きな家を丸ごと学校として利用し始めたばかりのフリースクール。
学校というと、どうしても公の大きな建物を想像してしまうが、多様化している社会に応じて学び方や学び舎も多様でなくてはならないことも感じた。
マーシーさんは、おしゃれな帽子をたくさん持っている。物腰が非常に柔らかく、作業も丁寧に教えてくれた。また、「同じ“子ども”っていう未来にかける者同士、頑張ろうね」と優しく声をかけてくれた。そして『コドラボ』という、子どもたちに向けたワークショップを開催する場所を作ったり、ヨガにダンスに木工と、実に多才な方であった。
いろはちゃん
僕が一番お世話になったのは、同じインカムのいろはちゃんだ。SAIHATEに到着して、SAIHATE内を案内してくれたのもいろはちゃんであった。
彼女はまだ若い。しかし、人の気持ちや仕草を敏感に察して声をかけるなど、真摯に人に寄り添える人であった。僕が悩んでいた時にも「なんか悩んでそうだなぁって思って声かけてみた。」と話しかけてくれた。
旅をしていると年齢という概念がなくなる。僕よりも若い人でも尊敬する人は山ほどいるし、ましてや他国の人は大人びている出で立ちに加え、物事をはっきり言う。例えそれが子どもであっても。海外に出て、自分の年を聞かれた機会はほとんどないし、僕も聞かなくなった。
子どもから学ぼうとする人は、きっとこの感覚を大切にしている人が多い気がする。
インカムがゲストを案内
ゲストが来ると、インカムがSAIHATE内を案内する。主にいろはちゃんがしていたが、この仕組みをとっているSAIHATEにより興味がわいた。
現在、理想郷と呼ばれている南インド「オーロヴィル」のsadhana forestに滞在しながらこの記事を書いているが、そこでもボランティア(滞在者)がツアー案内をしている。
以前、勤めていた保育園でも、園児が見学者を案内するという目標があった。それは、異年齢集団において人に教える・伝えるということが、最大の学びになるということを子どもの姿から実感していたからだ。
SAIHATEでの僕は、訪問者の案内はしなかったものの、ヤギや鶏の世話、農作業、畑仕事、フリースクールの家具を製作していたマーシーさん、マフィンを入れるおしゃれなboxを製作していたKENさん、甘夏の花の蒸留水を作っていたむつみさんなどのお手伝いをさせてもらい、住人の方の生活に触れることができた。
不定期で行われる「宴」
僕が滞在していた2週間でも、2回の宴が行われた。それも地域の人が明日宴やらない?くらいのノリで言ってきて開催されるという、実に柔軟な催しであった。
宴は、1人1品料理を持ち寄るシステムで、色使いも味も豊かなラインナップとなる。そこでは必ず、キャンプファイヤーが行われる。火というのは不思議だ。月夜に燃え盛る炎を眺めていると、様々な邪念が取り払われるような気がして仕方ない。
そこでのコミュニケーションは不思議と花が咲く。顔が見えにくいという薄暗さが関係しているのか。炎がそうさせるのか。不規則に燃え上がる炎が、これでもかというくらいの熱気を放って身も心もほぐしていく。
コミュニケーション仕掛け
SAIHATEには、コミュニケーションをとる仕掛けがいたるところにあった。定期的に行われる住人のコミュニティミーティングを始め、多彩なプロジェクト、住人グループLINE、BAR併設の集会所、共有の仕事部屋、宴などだ。
そして、早朝や夜に屋外の気持ちの良い風を感じている時に出会った住人同士とのたわいもない会話がごく自然に行われている。それは、まるでご近所さんと縁側に座って緑茶を飲みながら井戸端会議をしている昔の日本の姿を彷彿させるかのようであった。
現代には縁側という存在が消えつつある。その存在自体はなくなったとしても、そのものが担っていた役割は存続させなくてはならない。そういった人と人がつながれる環境を意図的に作る必要が、現代にはあるのかもしれない。それが、これから求められるコミュニティの形なんだと感じた。
次世代型コミュニティ大学
SAIHATEコミュニティマネージャーの坂井勇貴さんは、Facebookでこう投げかけている。
サイハテ村では「お好きにどうぞ」という強力なワードが文化の軸にありますが、コレは多様性という言葉に置き換えられると、最近になってふと気づいたんです。
というのは、「お好きにどうぞ」を掲げてその中で起こるコトを観察していると、こんな場面に出くわします。『私ってこういう人間なの!お好きにどうぞなんだから受け入れてよ!』って。
コレを聞いてどう思ったでしょう?「多様性を受け入れるって大変、カオスになりそう。」って感じた方が多いんじゃないでしょうか?そうです。その通りでした。それぞれ別の価値観を持った者同士がコミュニティに入ると、お互いの主張をし合ったり、どちらかが自分の主張を失った状態でフラストレーションを感じてしまう。
解決策はあるのだろうか?
そこで、そもそも多様性とはどんなコトなのかを調べると、
“多様性(たようせい)とは、幅広く性質の異なる群が存在すること。 性質に類似性のある群が形成される点が特徴で、単純に「いろいろある」こととは異なる。ーwiki”
と、ありました。コレって簡単に言うと、『似たもん同士のグループがそこら中にいっぱいある。』って状態なわけです。なるほど。多様性は「受け入れる」じゃなくて、「認める」ってコトなんだ。
つまり、あなたの言ってることも分かるし理解はするとしても、受け入れるかは別物だってこと。お好きにどうぞだからこそNoとも言えるって世界観です。
多様性とは、個性や性格は違えど、世界感が似た者同士が集まっているってのはイノベーションを起こしやすいし、関係性が楽しい。それでいてみんな単純に仲良しこよしってわけでもなく、相手の自由を認めた上でなら、批判も反論もある。
これを理解しないで、『幅広く性質の異なるものを尊重して受け入れなさい』とか言うからおかしくなる。通常、相手を認め合えない時点で受け入れる事はできないのだから、それぞれ認めあえて受け入れあえるコミュニティを形成すればいい。
ーそんなコトをコミュニティの学びとして住人と共有すると、サイハテ村の発起人の工藤 シンク (真工工藤)がこう言った。『オレって人と感覚が違うってよく言われるんだけど、理由がやっとわかった!オレだれでも受け入れるんだけど、認めてるわけじゃない』ー。
あなたはどっち?
▶︎NCU-次世代型コミュニティ大学は、コミュニティの中で生まれる気づきやメソッドを共有して学び合うバーチャルコミュニティです。ただいま仲間を募集中!詳しくは特設サイトを見てね!→ http://salon-ncu.com/
「時代が変わっても変わらないものを手に入れよう」
数年前から人間関係の希薄さが問題にはなっているものの、これといって何を行動すればいいのかはわかないまま時が過ぎた。そんな時に次世代のコミュニティという突破口に出会い、そしてこの「時代が変わっても変わらないものを手に入れよう」というNCU-次世代型コミュニティ大学の言葉に出会った。
以前勤めていた子ども園の恩師、藤森平司氏はよく「不易流行」の話をしていた。「不易」とは、まさに「時代が変わっても変わらないもの」。「流行」とは、時とともに移り変わっていくものであったり、変えていかなければいけないもの。
何かのムーブメントを起こそうとする時、何かと何かを掛け合わせる「流行」は生み出しやすい。しかし、そこに「不易」という「時代が変わっても変わらないもの」の存在がないがしろになっていることが多い。これがないと結局のところ、持続可能性はないのかもしれない。
SAIHATEコミュニティマネージャーの坂井勇貴さんは、そこに着目した『NCU-次世代型コミュニティ大学』を作り上げ、素敵な仲間と次世代型コミュニティの創造に人生をかけて取組んでいる。素直にかっこいいなぁと思った。
次世代型コニュニティという言葉にピンときた方は、ぜひこのサイトをのぞいてほしい。
ちなみに、僕もここの学生だ。
真の豊かさ
SAIHATEをあとにする前、三角駅前のコンビニで勇貴さんとお話ができた。勇貴さんは「ごめん、コーヒーおごってくれる?」と言いながら、僕との対等さを優しく自然に作ってくれた。
滞在中、会うたびにやんわりと包み込むようなトーンと、爽やか笑顔で挨拶をしてくれた勇貴さん。気持ちの良い挨拶というのは、こういう挨拶なんだなと思った。教科書に載せたい…。
勇貴さんは、時代によって組織のトップの求められる能力が変わってきたという話をしてくれた。現代は、組織自体の形も変容し、そこに「マネジメント」という役割の重要性がより高くなっているという。
保育の世界でも、きっとこのマネジメント力が必要になる。それも「環境マネジメント」。
企業でいうところのISO14001の環境マネジメントシステムと少し異なってくるが、子どもをとりまく環境をどうマネジメントするのか、「時代が変わっても変わらないもの」をどう環境に落とし込むのか、地域の核となるコミュニティの場として保育園をどうデザインするか…。
考えなくてはいけないことは山積みだが、楽しくてやりがいのある山積みなら大歓迎だ。
NCU-次世代型コミュニティ大学のサイトにはこんな言葉もある。
真の豊かさは「自分らしさと居心地の良いコミュニティ」にある。
「自分らしさと居心地の良いコミュニティ」
こんなコミュニティを子どもたちのため、そして自分のためにも作りたい。
自己犠牲では継続はありえない。
自分らしくいられて、なんかよくわからないけど居心地がいい。
そんなコミュニティはきっと誰もが求めているはずだ。
人と違うことに価値がある。
そんなことを体感した滞在であった。
SAIHATEのみなさん、そしてインカムのみんな…
ありがとうございました!!
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