「好きなものは何ですか?」
31年間、この問いにうまく答えられたことがない。
何かに没頭したり、足を運んだり、関心を寄せるものはあっても、それが「好き」なのかがわからない。
「好き」ってなんだろう。
素直にそう思う。
【すき(好き)】
1、心がひかれること。気に入ること。また、そのさま。
「〇〇が好き」と言ってしまうと、それに詳しくなければいけないと思ってしまう。
詳しさを人に語れるほど、僕はそれに向き合っているのだろうか。
人の話を聞いていると、自分が知らないことが次から次へと飛んでくる。
僕にその「詳しさ」が、どこかにあるのだろうか。
自分の「好き」に、心はひかれているのだろうか。
前回の「ライティング学」の中で、様々な人と出会えた。
・ユーチューバーが好きな方
・沖縄が好きな方
・カフェ巡りが好きな方
当然のように、僕より詳しい。
ただ、なんだろう。この不思議な感覚。
“詳しい”よりも前に来るもの。
「好き」を育んでいる感じ。
それが「熱量」であると感じたのは、伊佐さんの随所に出てくるストイックさに紛れ混んだ物書きへの「愛」と、ターニングポイントでの“楽しい”を選択していく姿勢からであった。
「周りにどう思われるのか」を考えていた自分がどこかにいたのだと思う。
人がなんと言おうが、自分はこれが好き。
たぶん、この感覚だ。
「好き」は、良い意味できっと1人称。
だから、それを共有することで育んでいけるのだ。
1人称が2人称になって、やがて3人称になっていく。
そうやって「好き」が大きくなって、まだ見ぬ世界にたどり着く。
「早く行きたければ一人で行け。遠くへ行きたければみんなで行け。」
伊佐さんが言っていたこの言葉が蘇ってきた。
きっと、この感覚だ。
決して「好き」=「それに超詳しい」というわけでなくていい。
ただ、それを通して自分を知ってもらう。
1人称を3人称にするために。
たとえ、それが大きな片寄りだとしても。
【すき(好き)】
2、片寄ってそのことを好むさま。物好き。また、特に、好色。色好み。
「好き」の中にある“片寄り”がその人の「魅力」に見えてきた。
いつの日か「普通ってなんだ」と考えたことがあったが、答えは出なかった。
きっと、片寄りがないことなのだと、今は思う。
それは、一見いいように見えて悲しくて寂しいこと。
片寄っていていいのだ。
思うままに振る舞おう。
片寄っていることが、「好き」なのだ。
【すき(好き)】
3、自分の思うままに振る舞うこと。また、そのさま。
(「好き」の2人称が恋愛?)小松崎高司